Linuxコマンドを覚えようと一覧表を開いて、数百個の多さに圧倒されて閉じる——未経験の方の定番のつまずきです。
結論から言うと、コマンドの一覧を暗記する必要はありません。現場でまず使うのは限られた顔ぶれで、最初は20個で足ります。この記事では、現役インフラエンジニアの実感で「最初に覚える20個」を使う場面ごとに整理し、忘れない覚え方まで解説します。
暗記より「場面とセット」で覚える
先に覚え方の原則です。コマンドは単語帳のように暗記しても定着しません。「今どこにいるか分からない→pwd」「ログから探したい→grep」のように、場面とセットで手に覚えさせるのが唯一の近道です。
以下の20個も「場面」でグループにしています。上から順に、実際に打ちながら進めてください。
最初に覚える20個
場面1: 自分の現在地を把握する(3個)
| コマンド | 役割 | 使用例 |
|---|---|---|
| pwd | 今いるディレクトリを表示 | pwd |
| ls | ファイル・ディレクトリの一覧 | ls -l |
| cd | ディレクトリを移動 | cd /var/log |
すべての作業はこの3つから始まります。「自分がどこにいて、何があるか」を常に把握するのは、現場作業の大原則です。
場面2: ファイルを扱う(5個)
| コマンド | 役割 | 使用例 |
|---|---|---|
| touch | 空ファイルを作る | touch memo.txt |
| mkdir | ディレクトリを作る | mkdir backup |
| cp | コピーする | cp a.conf a.conf.bak |
| mv | 移動・名前変更 | mv old.log archive/ |
| rm | 削除する | rm tmp.txt |
現場では設定ファイルを触る前にcpでバックアップを取るのが鉄則です。rmは取り消せないので、新人のうちは打つ前に一呼吸おく癖をつけてください。
場面3: 中身を見る・探す(6個)
| コマンド | 役割 | 使用例 | |
|---|---|---|---|
| cat | ファイルの中身を表示 | cat /etc/hostname | |
| less | 長いファイルをスクロール表示 | less /var/log/messages | |
| tail | 末尾だけ表示(ログの最新分) | tail -f app.log | |
| grep | 文字列で検索 | grep ERROR app.log | |
| find | ファイルを探す | find /var -name "*.log" | |
| wc | 行数などを数える | `grep ERROR app.log \ | wc -l` |
未経験入社で最初に任される「調べる仕事」はこの6個が主役です。特にgrepは、現場で最も打つコマンドと言っても言い過ぎではありません。
場面4: 権限とシステムの状態(6個)
| コマンド | 役割 | 使用例 | |
|---|---|---|---|
| chmod | 権限を変更 | chmod 644 file.txt | |
| chown | 所有者を変更 | chown app:app file.txt | |
| sudo | 管理者権限で実行 | sudo systemctl status nginx | |
| ps | 動いているプロセスを確認 | `ps aux \ | grep nginx` |
| df | ディスクの空きを確認 | df -h | |
| systemctl | サービスの起動・停止・状態確認 | systemctl status sshd |
エラーの定番「Permission denied」は権限の問題です。chmodとsudoの意味が分かると、自力で解決できるようになります。権限エラーの原因の切り分け方はPermission deniedの直し方で手順として解説しています。df -hはディスク枯渇という定番障害の点検に毎日使います。
この20個の後にやること
20個が手に馴染んだら、次はパイプ(|)とリダイレクト(>)でコマンドを組み合わせる段階、その先がシェルスクリプトでの自動化です。個別のコマンド暗記より、この「組み合わせ」に早く進むほうが実務力は伸びます。シェルスクリプトの最初の1本はシェルスクリプト入門で書き方を解説しています。
学ぶ順番に迷いたくない方は、Linux学習ロードマップを上から進めてください。この記事の20個は最初の2ステップにすべて含まれていて、1レッスンごとに実際に打って自動判定される演習形式です。会員登録すれば最初のコースは無料で試せます。
よくある質問
Q. コマンドのオプション(-lや-hなど)も全部覚えるべきですか?
いいえ。よく使う1〜2個だけ体で覚えて、残りは必要なときに調べれば十分です。現役エンジニアも全オプションは覚えていません。「調べ方を知っている」ことのほうが大事です。
Q. WindowsのコマンドプロンプトやPowerShellとは違うのですか?
別物です。見た目は似ていますが、コマンドの名前も文化も異なります。インフラの現場サーバーは大半がLinuxなので、転職目的ならLinuxのコマンドを学んでください。
Q. 資格の勉強(LPIC・LinuC)から入るのはだめですか?
だめではありませんが、順番としては「手を動かす→資格で体系を補強」をおすすめします。先に暗記から入ると、試験には受かっても手が動かない状態になりがちで、面接の実技的な質問で苦しくなります。