インフラエンジニアを目指して調べ始めると、必ず出てくるのが「クラウド」と「AWS」という言葉です。重要なのは分かるけれど、正体がつかめないまま用語だけが増えていく——そんな状態の方に向けて、現役インフラエンジニアがクラウドの基礎を最短で解説します。
クラウドとは「サーバーを借りる」仕組み
クラウドをひとことで言うと、サーバーやネットワークなどのインフラを、自分で買わずにインターネット越しに借りられる仕組みです。
クラウド以前の世界では、サービスを動かすには自社でサーバー(物理的なコンピューター)を購入し、データセンターに設置し、電源とネットワークを引いて管理していました。これをオンプレミスと呼びます。
| オンプレミス | クラウド | |
|---|---|---|
| サーバーの入手 | 購入して設置(数週間〜数ヶ月) | 画面操作で数分 |
| 費用 | 初期投資が大きい | 使った分だけ払う従量課金 |
| 増減 | 増設に時間がかかる | 必要なときに増やし、不要なら消す |
| 管理 | ハードウェアの面倒も自分で見る | 物理的な管理はクラウド事業者 |
「数分で借りられて、使った分だけ払う」。この身軽さが、いま多くの企業がクラウドを使う理由です。
AWSとは何か
AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供するクラウドサービスで、世界で最も広く使われています。日本の求人でも、クラウドといえばまずAWSが挙がります(他にMicrosoftのAzure、GoogleのGoogle Cloudがあります)。
AWSには200を超えるサービスがありますが、最初に知っておくべきは次の3つだけです。
EC2 — 借りるサーバー
EC2は「クラウド上のサーバー」です。画面やコマンドから数分でサーバーを起動でき、使い終わったら停止・削除できます。オンプレミスで数週間かかっていた「サーバーを用意する」が、コマンド1つになったものだと考えてください。
S3 — ファイルの置き場所
S3は「容量を気にしなくていいファイル置き場」です。画像や動画、ログ、バックアップなど、あらゆるファイルを保存できます。現場では「ログをS3に退避する」のような使い方が定番です。
IAM — 権限の管理
IAMは「誰が何をしてよいか」を管理する仕組みです。地味に見えますが、クラウドの事故の多くは権限設定のミスから起きるため、実務では最重要のサービスのひとつです。
この3つが分かると、「EC2でサーバーを動かし、ログをS3に保存し、IAMで触れる人を制限する」というクラウドの基本形が見えてきます。この基本形を実際のコマンドで確かめたくなったら、AWS学習ロードマップでEC2・S3・IAMを1つずつ演習しながら学べます。
未経験の転職では「概要まで」で十分
ここが本記事で一番伝えたいことです。未経験からインフラエンジニアを目指す段階では、AWSは概要まで——つまり、ここまでに書いた内容を自分の言葉で説明できれば十分です。
理由は2つあります。
- 未経験の採用で評価される中心はLinuxとネットワークだから。最初の現場(監視運用・構築補助)で毎日使うのはこちらで、面接でもここが見られます(Linuxの学習手順はLinuxの勉強は何から始める?にまとめています)
- AWSを深追いすると学習が長期化して挫折しやすいから。AWSはLinuxの土台があってこそ理解が進む領域で、順番を間違えると用語の暗記になってしまいます
現役でインフラの現場にいる立場から言うと、本格的なクラウドのスキルは転職後に実務と並行して学ぶほうが確実に身につきます。そしてLinux→クラウド→自動化と積み上げるルートは、その後の年収アップに最も直結する王道です。クラウドは「転職前に焦って詰め込むもの」ではなく「転職後の伸びしろ」と捉えてください。
無料でAWSに触れてみるには
概要を頭に入れたら、少しだけ手を動かしておくと理解が一気に固まります。ただし、実際のAWSアカウントは従量課金のため、消し忘れによる請求が未経験者には怖いポイントです。
InfraDojoでは、ブラウザ上のAWS CLI演習環境を用意しています。実アカウント不要・料金ゼロで、EC2の起動停止やS3の操作を実際のコマンドで体験できます。キャリアロードマップには、この記事の内容に対応する「クラウド(AWS)の概要」ステップ(4コース・約2時間)が含まれているので、転職準備の範囲でクラウドに触れられます。転職後に本格的に学ぶ段階になったら、AWS学習ロードマップ(40コース)へ進んでください。
よくある質問
Q. AWSの資格(クラウドプラクティショナー等)は取るべきですか?
転職前に必須ではありません。取るなら、この記事レベルの概要理解の証明としてクラウドプラクティショナーが候補になりますが、優先度はLinuxの実技より下です。転職後にSAA(ソリューションアーキテクト アソシエイト)を目指すのが定番ルートです。
Q. AzureやGoogle Cloudではだめですか?
だめではありませんが、日本の求人数はAWSが最多で、学習教材も揃っています。最初の1つはAWSにして、概念を掴んでから他クラウドに広げるのが効率的です。考え方(サーバーを借りる・従量課金・権限管理)は共通しています。
Q. クラウドが普及したら、Linuxの知識は不要になりませんか?
なりません。EC2をはじめクラウド上のサーバーの中身はLinuxで動いていることが多く、クラウド時代こそLinuxの操作力が土台になります。クラウドはLinuxの代わりではなく、Linuxの上に積むスキルです。